札幌高等裁判所 昭和61年(行コ)5号 判決 1988年4月25日
北海道網走市北六条西七丁目六番地
控訴人(第一審原告)
網走観光株式会社
右代表者代表取締役
野田明
右訴訟代理人弁護士
山本隼雄
同
大井相石
北海道網走市南六条五丁目九番地
被控訴人(第一審被告)
網走税務署長
大谷一
右指定代理人
坂井満
同
佐藤雅勝
同
斎藤昭三
同
西谷英二
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人
原判決を取り消す。
被控訴人が控訴人に対し昭和五六年七月九日付けでした控訴人の昭和五二事業年度の法人税についての重加算税賦課決定処分を取り消す。
訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文と同旨。
第二当事者の主張
当事者双方の事実上及び法律上の主張は、次のように加えるほか、原判決の事実摘示のとおり(ただし、原判決五枚目表四行目の「行政秩序罪」を「行政秩序罰」に、同じく表八行目目の「同3」を「同3(一)」に改める。)であるから、これを引用する。
一 控訴人
(国税通則法六八条の趣旨及び解釈について)
納税者の申告義務、納税義務の履行の確保を図るための加算税のうちでも、重加算税は、特に悪質な申告納税義務の違反に対し、特に重い経済的負担を課する制度である。
すなわち、加算税は、行政秩序罰としての性格を有するから、違反者の不正行為の反社会性、反道徳性に着目して制裁として課せられる刑罰と趣旨、性質を異にすると説明されるものの、重加算税においては、特に重い制裁的意義を有するものであることは否定され得ないし、見逃されるものではない。
重加算税は、行政秩序罰としての性格を有するものであるから、その性質上行為の形式又は外形さえ満たせば即成立すると安易に拡張的に解するのは妥当ではない。
「隠ぺい又は仮装の行為」という字義自体、行為の積極性を意味するのが通例であるし、重加算税の実質から見ても、かなり積極的な行為の存在が認められなければならないと解すべきである。
二 被控訴人
(国税通則法六八条の趣旨及び解釈について)
この点については、原審で主張したとおりである。これを本件に即して述べると、控訴人の代表取締役である野田明が、控訴人の資産であつた本件建物等を野田個人に売却することにより控訴人に譲渡益が生ずることを認識していながら、これを申告しないことでもつて、国税通則法六八条の「隠ぺい又は仮装」したとの要件が充足されるものというべきである。
第三証拠
当事者双方の証拠関係は、本件訴訟記録中の証拠目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 当裁判所も、控訴人の被控訴人に対する本訴請求は理由がないので棄却すべきものと判断する。その理由は、次に記載するほか、原判決の説示する理由のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決六枚目表九行目の「申告をしていなかつたことについて」の下に「は、」を加える。
2 原判決六枚目裏二行目の「同第九、一〇号証」の下に「同第二一、二二号証」を加える。
3 原判決六枚目裏六行目目から七行目にかけての「国税副審査官」を「国税副審判官」に改める。
4 原判決六枚目裏九行目の「証人嵯峨井の証言」を「原審及び当審証人嵯峨井隆雄の証言」に改める。
5 原判決六枚目裏一一行目の「証人嵯峨井」から同七枚目表一行目の「尋問結果」までの部分を「原審及び当審証人嵯峨井隆雄、原審証人益田生人、同坂野弘、当審証人千田転の各証言、原審及び当審における控訴会社代表者野田明の尋問の結果」に改める。
6 原判決七枚目表七行目から八行目にかけての「代金九八三一万五〇〇〇円」を「代金一億円(ただし、昭和五二年一月八日に右当事者間で売買の対象たる土地の実測面積によつて代金を九七八一万五〇〇〇円にすることを合意した。)」に改める。
7 原判決七枚目裏一行目の「嵯峨井隆雄」を「嵯峨井隆雄」に改める。
8 原判決八枚目表七行目の「重復記入」を「重複記入」に改める。
9 原判決八枚目裏九行目から一〇行目にかけての「道東環境整備興発株式会社」を「道東地方環境整備興発株式会社」に改める。
10 原判決一〇枚目裏六行目から七行目にかけての「原告代表者野田の尋問及び乙社代表者野田明の尋問の結果並びに原本の存在及びその成立につき争いのない乙第二四号証記載の控訴開始社代表者野田明の供述中には、本件申告が網走税務署職員金泉吉明の本件建物等の譲渡についての税務指導によるものである旨の」に改める。
11 原判決一一枚目表二行目の「各供述部分があるが」を「各供述部分があり、当審における控訴会社代表者野田明の尋問の結果により山崎某作成の書面として成立が認められる甲第四号証にも右認定に反する記載部分があるが」に改める。
12 原判決一一枚目表三行目の「前記各証拠」の下に及び当審証人金泉吉明の証言」を加える。
13 原判決一一枚目表九行目の「あつたこと明らかであり」を「あつたことが明らかであり」に改める。
14 原判決一一枚目裏一〇行目の「貸借料」を「貸借料差額分」に改める。
二 よつて、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 舟本信光 裁判官 安達敬 裁判官 長濱忠次)